瞼の裏に広がる世界。
夢の中で出会った未来。
鏡の中に映った過去。
あなたの中にある、物語。
私に預けてみませんか。
対応可能ジャンル
ヘテロラブ(HL)/ ボーイズラブ(BL)/ ガールズラブ(GL)3L対応
人外・ゲテモノ・バケモノ / R18 …etc
当方特に地雷ありません。
未履修の作品につきましても対応可能ですので一度ご相談くださいませ。
料金形態 ※2024年5月~改定
◯基本料金 一文字1.5円(10の位切り捨て)
※お支払い頂いた金額分の文字数は最低限保証致します。超過分はサービスです。
※その他、予算など相談に応じます。
◯商用利用 一文字1.7円(10の位切り捨て)
※二次創作ジャンルに関しては商用利用はお断りしております。
※Skebからのご依頼の場合は商用利用「不可」です。
◯非営利サイトへの公開 +¥1000
※但し、クレジットをご記載頂ける場合は無料。Skebはこちらに該当します。
※著作権譲渡はしておりません。自作発言はご遠慮ください。
依頼方法
三種類の依頼方法をご用意しております。
メールフォームより直接ご依頼をいただく形です。
ご相談・見積もりだけでもお気軽にどうぞ。
支払い方法 PayPal・銀行振込
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実績
2024/05/29納品 「雨音ロンド」
サンプル小説
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男女カップリングサンプル
「どうした、シャーリー」
「おはようございます、エリック様。その、新し
く買ったドレスを見てもらいたくて」
そう言うと彼はドアを開け放って、その瞳に私
の姿を映す。すると彼は眠気も吹っ飛んだと言い
たげなぽかんとした様子でこちらを見ていた。
驚くのも無理もない。
彼の前で濃い色以外のドレスを着たのはこれが
初めてだったのだから。
「この間クリスティーヌと一緒に買ったんです。
彼女と色違いで……。一緒に着て出かけたいと強
請られてしまって」
気恥ずかしさから思わず笑みが溢れる。すると
目の下に真っ黒い隈を湛えた彼は不満そうな表情
を浮かべてただ一言、
「シャル。それを外で着るなよ」
とだけ告げた。
「えっ?」
褒めてくれるとまでは期待していなかったが、
彼はどんな顔をするだろうとワクワクしていた私
は思わず固まってしまう。
「な、何故です?」
「どうしても、だ。絶対に着るな」
訊ねても彼は理由を教えてくれない。
パステスカラーのドレスなんて初めてではあっ
たが、自己評価としては悪くないと思っていたか
ら尚更混乱する。何より、クリスティーヌと一緒
にこれを着てお出かけをすると約束してしまった
のだ。
外で着ないわけにはいかない。
「い、嫌です。何が何でもこれ、着ますから!」
私がぷいっとそっぽを向きながらそう言うとエ
リック様は表情を歪めてこちらをぎろりと睨んだ。
「だめと言ったらダメだ!」
「絶対に着ます! 大体、私が何を着ようとエリ
ック様には関係ないじゃないですかっ」
「何故言うことを聞かないのだ、シャーリー!」
「エリック様はいつもそうです! ちゃんと理由
を仰ってください! 頭ごなしにダメと言われた
って納得できません!」
普段の私達であれば相手のことを思いやり、冷
静に話し合いができていたはず。
赤の他人なのだから勿論意見が食い違うことも
あるだろう。一緒に暮らしていて、お互い相手に
不満を抱くこともあっただろう。それは自分と彼
が違う人間であるが故に発生する避けようのない
ものだと自分を納得させられていた。
「似合っていないのなら似合っていないと素直に
言ってくださればいいじゃないですか!」
「いや、そういうわけではなくてだな……! と
にかくダメだ!」
しかしその日はたまたま条件が悪かったのだ。
エリック様は仕事が多忙すぎて疲れていて。
私はと言うとつい最近店に悪質な客が来て苛つ
いていた。
だからと言い訳するつもりもないがこの大喧嘩
は色々な要因が積もり積もって発生してしまった
――謂わば、防げた事故だった。
「もう良いです! 勝手に着ますから! エリッ
ク様の分からずや!」
「それはこちらの台詞だ! 全く……最近お前は
我儘が過ぎるぞ!」
「貴方に言われたくないですっ!」
「なんだと⁉」
堰を切ったように溢れ出す苛立ちを抑え切れな
いまま、日頃の不満をぶつけ合った私達はぷいと
互いに背を向けて自室に戻った。
彼とこんなにぶつかったのは、五年前オペラ座
の地下で、ラウルに手をかけようとした彼と衝突
した時以来かもしれない。
「もう!」
私は怒りを抑えないままクローゼットから旅行
用のカバンを取り出してお気に入りのドレスや化
粧品、調香用の道具なんかを煩雑に詰める。
ああもう。何もかも納得いかない。
どうしてちゃんと理由を話してくれないの。
家出なんてまるで子供のようだと馬鹿にされて
しまうだろうけれど、このどうしようもない感情
を収めるためには距離と時間が必要だと本能的に
思った。
日用雑貨がぱんぱんに詰められたカバンを手に
部屋を出る。
その時ふと、彼の部屋のドアに目が留まった。
彼はきっと自室の中にいるだろう。何を思ってい
るかまではわからないが。
少し……ほんの少しだけ、彼の部屋の前でぼう
っと立ってみる。もしかしたら私が居ることに気
がついた彼がひょっこりと顔を出して謝ってくれ
るんじゃないかって。そうしたら自分も酷い物言
いをしてしまったことを謝って、ちゃんと話し合
おうって。
しかし待てど暮せど彼が部屋から出てくる様子
はない。
「私、出ていきますからね!」
寂しさと一緒に、勝手に期待しておきながらも
裏切られたような気持ちになった私はドアにそう
吐き捨てて、居住スペースから店へと移動した。
店のカウンターにおいてあった適当な紙に「所
用により暫く臨時休業いたします」と書いて店の
ドアに貼り付け、重たい荷物を持って店を出る。
店のドアに鍵をかけていたところで、あら、と
聞き慣れた声が耳を撫でた。
「シャーリー?」
名を呼ばれて振り向くと春の陽気を浴びながら
栗色の髪を可愛らしく纏め上げたクリスティーヌ
と目が合う。彼女は一緒に選んだパステルカラー
のドレスに身を包んでいた。薄桃色のそれは可憐
な彼女によく似合っている。
期せずしてお揃いコーデになってしまったこと
に言及することもできず私はつい怒りのまま彼女
に当たってしまいそうになったが、思い直して小
さく息を吐き、できるだけポーカーフェイスを保
ってクリスティーヌに向き直った。
―――SKIMAにてご依頼を頂いた二次創作小説の一部抜粋です。
※現在SKIMAでの依頼は受け付けておりません。
依頼を希望・ご検討中の方はメールフォームよりお願い致します。
和風テイストサンプル
暗い。
とてつもなく暗く――暗くて、暗くて、暗い。
果たして本当に此の場所は、現し世に存在して
いる空間なのかと神に問うてしまいたくなる程に、
此処は暗くて冷たい。固い座敷をがりがりと指の
爪先で撫でたら人間の汚い欲望の臭いがつんと鼻
先をついて、嫌悪感と一緒に胃の中身が喉元まで
迫り上がってきた。
まァ、吾が内側に詰まっているのは内蔵ではな
く、怨恨とか怨嗟とか怒りとか悲しみとか嘆きと
か、苦しみとか悔しさとか遣る瀬無さとか殺意と
か……そういうものだから、人間とかいう奴らが
良くやる”胃の中身を吐き出す”なんてことは到底
不可能なのだけれど。
現の汚いものを全てかき集めて作ったような、
そんな空間にいるのは、吾と、吾が生まれて初め
て何処迄も添い遂げてやらんと誓った愛すべき存
在だけ。愛しいものと共に在るという事実。其れ
だけが唯一の救いとも言えよう。
「砌」
名を呼んでやると御前様は幸薄そうな顔にほん
のりと笑みを乗せて、血色のない頬を緩ませる。
どうしてこんな場所に居ながら、何よりも大事
に思っていた家族によって閉じ込められておきな
がら、この世の全てから見放されておきながら―
―こんなにも穏やかに微笑むことが出来るのだろ
う。吾はと言えば、何もかもを恨んで、何もかも
を壊して、何もかもを引き裂いて、御前様をこん
な場所に追いやった奴らの喉仏を食い千切ってや
りたくて仕様が無いというのに。
「どうしましたか、八房」
そう言って御前様は吾の肩に頭を預けて、吾が
背を撫でる。
心の内は如何しようもないほど色んな奴への怨
みつらみで煮えくり返っているけれど、御前様に
触れられるだけで二本ある尾が勝手に揺れて、喉
は甘え声を出そうと狭まりながら震えた。
「好きだ。好きだ、砌」
御前様の頬に鼻先を擦り付けると、御前様はく
すくすと笑みを零しながら「仕様のない子ですね」
と言って吾の頭やら耳やら頬やらを揉みくちゃに
撫でる。此の人の優しさやら甘さやらに触れたら
触れただけ、この世に存在する彼以外の全てが憎
らしく感じて、狂ってしまいそうになった。
此の人は本来こんな場所にいるべき御仁ではな
い。
こんな日の光も届かないような座敷牢で、雨水
で喉の乾きを潤して、数日に一度貰えるかどうか
わからない、痩せ細った小さな焼き魚を食んで、
死んだように生き存える。そんな生涯が許される
御仁ではない。そのはずなのに。
「御前様は一体、何を考えておるのだ」
「……八房?」
不思議そうに首を傾げた御前様は、相変わらず
反吐が出るほど美しい笑みで吾の顔を覗き込んだ。
彼の変わらぬその様子に、また吾の怒りとか恨み
とか、そういうものが汚く渦巻いて止まらなくな
る。
「何故、彼奴らに従う? 御前様のお陰でこの家
は今、札束に火をつけて暖をとれるほど繁栄して
いる。だというのに、その立役者である御前様を
忌み嫌って座敷牢に閉じ込めた挙げ句、満足に飯
も水も出さんのだぞ。どころか早く逝ってしまえ
とまで曰うのだぞ。何故ここまでされておいて、
御前様は何も恨まず何も嫌わず、其儘で居られる
のだ」
吾が泣くように、縋るように、祈るように、願
うように、彼の胸元に額を押し付けて襟元を握り
ながらそう言っても、やはり御前様の表情には負
の感情一つ浮かぶこともなく、何かを揺らすこと
もなく。――彼は唯そこに優しく存在していた。
否、もしかしたら彼の心と呼ばれるものは、其
処にはもう無かったのかもしれない。家族の代わ
りに全ての不幸を背負い、全ての恨みを買い、そ
れでも尚家族を愛して幸せを願った此の人の心は、
そんな家族から腫れ物扱いされて座敷牢に押し込
められた瞬間に亡くなってしまったのかもしれな
い。
だってそうでもなければ、一体此の人が何を糧
として生きているのか到底想像もつかないから。
「それでも、彼らは私の家族ですから。家族は助
け合うものでしょう」
だん、と。気がつけば吾は御前様の身体を全体
重で押し倒して、冷たい座敷の上に彼の手首を縫
い付けていた。今目の前にいる彼のことを愛して
いなければ……吾はこの男の喉元にこの鋭い牙を
突き立てていただろう。そもそも彼に気を許して
いなければ共にこんな処にいなかっただろうから
真相はわからないけれど。
「八房」
名を呼ばれて漸く彼の顔を真正面から見つめる。
先程まで変わらぬ笑顔を貼り付けていた御前様は、
ようやっとその薄っすらとした笑みを崩した。
なんだか安心したような憎らしいような不思議
な心持ちに囚われつつ、それから一体どんな顔を
するのかと期待していたら、御前様はまるで恋に
溺れるような、愛おしいものを見るような顔でこ
ちらをじいと見上げるのだから、やれいけと吾の
背中を押したどす黒い感情は尻尾を巻いて引っ込
んでしまうのだ。
その代わりに、彼をどうにも助けてあげられな
いという事実が――こんな場所からさっさと連れ
出してくれ、と言って貰えないもどかしさが、じ
くじくと吾の胸の辺りを焦がした。
「もっと……もっと、なにかあるだろう。憎らし
いとか、殺してやりたいとか、呪ってやりたいと
か、そういうものが。人間はそういうのを持って
いる筈だろう。人間とかいうやつは、何もされて
いなくても勝手に何かを恨み、自身が飲み込めな
い事柄を全て何かの所為にして他者を憎むはずだ。
それなのに、何故」
悔しくて、苦しくて。
床に転がった御前様の着物にしがみつく。
せめて恨んでくれ。
せめて憎んでくれ。
御前様を苦しめているものを全て、嫌ってくれ。
「無駄だからです」
そんな御前様の声が聞こえたと思ったら、ちう、
と音がする。彼の少しだけ乾いた唇が頬に触れた。
――――――執筆中同人小説「来世も見つけて、憑いてきて。」より一部抜粋
BLカップリングサンプル ※魔族×人間CP
「お前が――魔王なのか」
「強情なやつだな。次に僕をお前呼ばわりしたら、
食ってしまうよ」
にたりと口角を上げた魔物の口元から鋭い牙が
ちらりと覗いた。捕食される側になるなんて久し
ぶりで、つい、指先がぞくりと震えて冷たくなる。
だけど、負けたくない。せめて気持ちだけでも。
「ふん。どうせ私を無事で帰すつもりもないんだ
ろ、お前は」
わざとらしく『お前』を強調してやった。する
とそいつはこれまた楽しそうに笑って、忠告はし
たからな、と呟く。かと思ったら私が着ていたド
レスのホックにゆっくりと手をかけた。
ぷつ、ぷつ、と音を立てて少しずつドレスが肌
蹴ていく。
「魔物ってのは案外グルメなんだな。食い物の包
みを脱がそうとするなんて。てっきり頭から丸呑
みするもんだと思ってたが」
「食い物? ふふ、君は勘違いをしている」
「……なに?」
そう問うと魔物は肩口に顔を埋める。一体何を
と思っているとぬらりとした感触が首筋を這って、
思わずびくりと肩が跳ねた。
「っ⁉」
「君を食い物だとは思っていないさ。今はまだ、
だけど。せっかく面白そうなものを見つけたんだ。
……飽きるまで楽しまないと、勿体ないだろう?」
こいつ、そういうことか……!
確かに魔物の中にはその加虐性の高さから人間
を性的な意味で襲う種族もいると聞いたことがあ
る。だからこそ女性が夜に独り歩きをするのは危
険とされているのだけれど……まさか自分がその
被害に遭いかけているとは考えてもいなかった。
だけど自分は令嬢を装っているだけでれっきと
した男だ。脱がしたところで女じゃないと知れば
多少驚くだろうし、その隙を突いて逃げ出してや
る。そう息巻いて、どくどくと鳴る心臓を落ち着
かせるように小さく息を吐いた。
そうこうしているうちにホックは全て外され、
はらりとドレスが腰元まで落ちてくる。
「ん?」
ドレスの奥から現れた身体を見た魔物は不思議
そうに首を傾げた。
今だ、と咄嗟に逃げ出そうとするも、その作戦
は失敗に終わる。腰に回っているだけの手はどれ
だけ暴れようとぴくりともしない。それどころか
暴れれば暴れただけ魔物の拘束はキツくなってい
って、もはや逃げ出すことは不可能だとさえ思え
た。
「こらこら、逃げようとするんじゃない。君はも
う僕のものなんだから」
「くそ、離せよ! 何が楽しくてこんなことを!
私が男だってことはわかっただろう⁉️」
そう言うと魔物はぽかんとした後、ああそうか、
と零す。
「人間は普通、男女でまぐわうのだったな。だか
ら君もこうして女に化けているんだろう? 男を、
自分の領域に誘い込むために」
「そ、それがなんだって言うんだ」
「君はどうやら男だから僕に食われないと思って
いるみたいだけど――残念ながら、僕には性別な
んて関係ないんだ」
「……は?」
にこやかに笑った魔物は私の体を抱き寄せ、ぐ
り、と自身の下半身を押し付けた。
服の上からでもわかるその大きさに思わず息を
呑む。
「ひっ⁉」
「僕がこれを使うのは……手に入れた玩具に、僕
のものだって印をつけるためだから」
舌舐めずりをするそいつを見て、ぞくりとした。
この魔物が言っている『印』とはきっと眷属契
約のことだろう。一定以上の強さを持つ魔物は人
間に魔力を注入することで自分の眷属を作り出す
ことが出来るのだ。
眷属となった人間は自我を失い、ただ主の命令
を聞くだけの存在になってしまう。
今すぐ逃げなければ、自分はおしまいだ。焦り
が先行して背筋を嫌な汗が伝って寒気がする。
早くこの場から逃げろと体中から危険信号が発
信されているのに――こいつから発せられている
圧が強すぎるせいかもはや身体が逃げ出すことを
諦めていて。
簡単に言えば絶体絶命という状況だった。
「特別に優しくしてやる。だから大人しく僕のも
のになるといい」
ふわふわの指先が肌を擦る。妙に優しく触れら
れて、思わず声が出そうになるのを必死に堪えた。
ぎゅうと唇を噛んで口元を抑えていると手首を
掴まれて引き剥がされる。
「なんだ、恥ずかしがっているのか? ふふ、面
白いな」
「この野郎……っ、んうっ」
まるで恋人に愛撫でもするようにして優しく触
れられ、キスをされ、頭がどうにかなってしまい
そうだった。嫌なはずなのに柔い指先が這う度に
身体が跳ねて快感を訴える。
「やめっ、ろぉ……やだぁ……っ」
恥ずかしさ、悔しさ、両親の仇が目の前にいる
というのに良いようにされているもどかしさ――
色々な感情が湧き上がってきて思わず目尻から一
粒涙が溢れ落ちた。
途端、魔物はぽかんとした表情を浮かべる。し
かし数秒後には、またにんまりと楽しそうに笑っ
た。
「気に入った」
何を思ったのかそいつは一度脱がしたドレスを
いそいそと元に戻し始める。一体どういった心境
の変化だろう。
わけが分からず涙も止まってしまい、混乱する
脳裏で魔物の顔を見た。
「君に印をつけるのは、君が本当の意味で僕のも
のになった時までとっておくことにする」
「本当の意味……?」
不思議がって問いかけるも魔物は優しくにこり
と微笑むだけで何も言わない。
「そういえば、君の名前を教えてもらってないな」
「……答えないと言ったら?」
「それでもいい。こうすればわかるから」
そう言うなり魔物の手のひらが頬を包み込んで、
ゆっくりと顔が近づいてくる。今度は何をされる
んだと思いながらぎゅっと目を瞑ると額にこつん
と何かが当たるような感触がした。するとなんだ
か、記憶の中に誰かが勝手に侵入してくるような
不思議な感覚に襲われる。
恐る恐る目を開けると目の前に緑色の眼光が飛
び込んできた。まるで子供の体調を心配する母親
のようにやつは私の額にひやりとした体温を当て
続ける。
それから数分後、魔物はそっと離れながら微笑
んだ。
「君はサルビアというのだな。綺麗な名前だ」
「……今のも魔法か。便利なものだな」
皮肉たっぷりにそう言ってやると魔物は、そう
だろう、と自慢げに目を細める。
「じゃあこれから君のことはルビィと呼ぶことに
しよう」
「っ‼」
思わず固まった。それは……ルビィという名は、
幼き頃、父と母が自分を呼ぶときによく使ってい
た愛称だったから。
――――――頒布中同人小説「王座に座して、手を引いて。」より一部抜粋
男女カップリングサンプル
「どうした、シャーリー」
「おはようございます、エリック様。その、新しく買ったドレスを見てもらいたくて」
そう言うと彼はドアを開け放って、その瞳に私の姿を映す。
すると彼は眠気も吹っ飛んだと言いたげなぽかんとした様子でこちらを見ていた。
驚くのも無理もない。
彼の前で濃い色以外のドレスを着たのはこれが初めてだったのだから。
「この間クリスティーヌと一緒に買ったんです。彼女と色違いで……。一緒に着て出かけたいと強請られてしまって」
気恥ずかしさから思わず笑みが溢れる。すると目の下に真っ黒い隈を湛えた彼は不満そうな表情を浮かべてただ一言、
「シャル。それを外で着るなよ」
とだけ告げた。
「えっ?」
褒めてくれるとまでは期待していなかったが、彼はどんな顔をするだろうとワクワクしていた私は思わず固まってしまう。
「な、何故です?」
「どうしても、だ。絶対に着るな」
訊ねても彼は理由を教えてくれない。
パステスカラーのドレスなんて初めてではあったが、自己評価としては悪くないと思っていたから尚更混乱する。何より、クリスティーヌと一緒にこれを着てお出かけをすると約束してしまったのだ。
外で着ないわけにはいかない。
「い、嫌です。何が何でもこれ、着ますから!」
私がぷいっとそっぽを向きながらそう言うとエリック様は表情を歪めてこちらをぎろりと睨んだ。
「だめと言ったらダメだ!」
「絶対に着ます! 大体、私が何を着ようとエリック様には関係ないじゃないですかっ」
「何故言うことを聞かないのだ、シャーリー!」
「エリック様はいつもそうです! ちゃんと理由を仰ってください! 頭ごなしにダメと言われたって納得できません!」
普段の私達であれば相手のことを思いやり、冷静に話し合いができていたはず。
赤の他人なのだから勿論意見が食い違うこともあるだろう。一緒に暮らしていて、お互い相手に不満を抱くこともあっただろう。それは自分と彼が違う人間であるが故に発生する避けようのないものだと自分を納得させられていた。
「似合っていないのなら似合っていないと素直に言ってくださればいいじゃないですか!」
「いや、そういうわけではなくてだな……! とにかくダメだ!」
しかしその日はたまたま条件が悪かったのだ。
エリック様は仕事が多忙すぎて疲れていて。
私はと言うとつい最近店に悪質な客が来て苛ついていた。
だからと言い訳するつもりもないがこの大喧嘩は色々な要因が積もり積もって発生してしまった――謂わば、防げた事故だった。
「もう良いです! 勝手に着ますから! エリック様の分からずや!」
「それはこちらの台詞だ! 全く……最近お前は我儘が過ぎるぞ!」
「貴方に言われたくないですっ!」
「なんだと⁉」
堰を切ったように溢れ出す苛立ちを抑え切れないまま、日頃の不満をぶつけ合った私達はぷいと互いに背を向けて自室に戻った。
彼とこんなにぶつかったのは、五年前オペラ座の地下で、ラウルに手をかけようとした彼と衝突した時以来かもしれない。
「もう!」
私は怒りを抑えないままクローゼットから旅行用のカバンを取り出してお気に入りのドレスや化粧品、調香用の道具なんかを煩雑に詰める。
ああもう。何もかも納得いかない。
どうしてちゃんと理由を話してくれないの。
家出なんてまるで子供のようだと馬鹿にされてしまうだろうけれど、このどうしようもない感情を収めるためには距離と時間が必要だと本能的に思った。
日用雑貨がぱんぱんに詰められたカバンを手に部屋を出る。
その時ふと、彼の部屋のドアに目が留まった。彼はきっと自室の中にいるだろう。何を思っているかまではわからないが。
少し……ほんの少しだけ、彼の部屋の前でぼうっと立ってみる。もしかしたら私が居ることに気がついた彼がひょっこりと顔を出して謝ってくれるんじゃないかって。そうしたら自分も酷い物言いをしてしまったことを謝って、ちゃんと話し合おうって。
しかし待てど暮せど彼が部屋から出てくる様子はない。
「私、出ていきますからね!」
寂しさと一緒に、勝手に期待しておきながらも裏切られたような気持ちになった私はドアにそう吐き捨てて、居住スペースから店へと移動した。
店のカウンターにおいてあった適当な紙に「所用により暫く臨時休業いたします」と書いて店のドアに貼り付け、重たい荷物を持って店を出る。
店のドアに鍵をかけていたところで、あら、と聞き慣れた声が耳を撫でた。
「シャーリー?」
名を呼ばれて振り向くと春の陽気を浴びながら栗色の髪を可愛らしく纏め上げたクリスティーヌと目が合う。彼女は一緒に選んだパステルカラーのドレスに身を包んでいた。薄桃色のそれは可憐な彼女によく似合っている。 期せずしてお揃いコーデになってしまったことに言及することもできず私はつい怒りのまま彼女に当たってしまいそうになったが、思い直して小さく息を吐き、できるだけポーカーフェイスを保ってクリスティーヌに向き直った。
―――――――――――
SKIMAにてご依頼を頂いた
二次創作小説の一部抜粋です。
※現在SKIMAでの依頼は
受け付けておりません。
依頼を希望・ご検討中の方は
メールフォームよりお願い致します。
和風テイストサンプル
暗い。
とてつもなく暗く――暗くて、暗くて、暗い。
果たして本当に此の場所は、現し世に存在している空間なのかと神に問うてしまいたくなる程に、此処は暗くて冷たい。固い座敷をがりがりと指の爪先で撫でたら人間の汚い欲望の臭いがつんと鼻先をついて、嫌悪感と一緒に胃の中身が喉元まで迫り上がってきた。
まァ、吾が内側に詰まっているのは内蔵ではなく、怨恨とか怨嗟とか怒りとか悲しみとか嘆きとか、苦しみとか悔しさとか遣る瀬無さとか殺意とか……そういうものだから、人間とかいう奴らが良くやる”胃の中身を吐き出す”なんてことは到底不可能なのだけれど。
現の汚いものを全てかき集めて作ったような、そんな空間にいるのは、吾と、吾が生まれて初めて何処迄も添い遂げてやらんと誓った愛すべき存在だけ。愛しいものと共に在るという事実。其れだけが唯一の救いとも言えよう。
「砌」
名を呼んでやると御前様は幸薄そうな顔にほんのりと笑みを乗せて、血色のない頬を緩ませる。
どうしてこんな場所に居ながら、何よりも大事に思っていた家族によって閉じ込められておきながら、この世の全てから見放されておきながら――こんなにも穏やかに微笑むことが出来るのだろう。吾はと言えば、何もかもを恨んで、何もかもを壊して、何もかもを引き裂いて、御前様をこんな場所に追いやった奴らの喉仏を食い千切ってやりたくて仕様が無いというのに。
「どうしましたか、八房」
そう言って御前様は吾の肩に頭を預けて、吾が背を撫でる。
心の内は如何しようもないほど色んな奴への怨みつらみで煮えくり返っているけれど、御前様に触れられるだけで二本ある尾が勝手に揺れて、喉は甘え声を出そうと狭まりながら震えた。
「好きだ。好きだ、砌」
御前様の頬に鼻先を擦り付けると、御前様はくすくすと笑みを零しながら「仕様のない子ですね」と言って吾の頭やら耳やら頬やらを揉みくちゃに撫でる。此の人の優しさやら甘さやらに触れたら触れただけ、この世に存在する彼以外の全てが憎らしく感じて、狂ってしまいそうになった。
此の人は本来こんな場所にいるべき御仁ではない。
こんな日の光も届かないような座敷牢で、雨水で喉の乾きを潤して、数日に一度貰えるかどうかわからない、痩せ細った小さな焼き魚を食んで、死んだように生き存える。そんな生涯が許される御仁ではない。そのはずなのに。
「御前様は一体、何を考えておるのだ」
「……八房?」
不思議そうに首を傾げた御前様は、相変わらず反吐が出るほど美しい笑みで吾の顔を覗き込んだ。彼の変わらぬその様子に、また吾の怒りとか恨みとか、そういうものが汚く渦巻いて止まらなくなる。
「何故、彼奴らに従う? 御前様のお陰でこの家は今、札束に火をつけて暖をとれるほど繁栄している。だというのに、その立役者である御前様を忌み嫌って座敷牢に閉じ込めた挙げ句、満足に飯も水も出さんのだぞ。どころか早く逝ってしまえとまで曰うのだぞ。何故ここまでされておいて、御前様は何も恨まず何も嫌わず、其儘で居られるのだ」
吾が泣くように、縋るように、祈るように、願うように、彼の胸元に額を押し付けて襟元を握りながらそう言っても、やはり御前様の表情には負の感情一つ浮かぶこともなく、何かを揺らすこともなく。――彼は唯そこに優しく存在していた。
否、もしかしたら彼の心と呼ばれるものは、其処にはもう無かったのかもしれない。家族の代わりに全ての不幸を背負い、全ての恨みを買い、それでも尚家族を愛して幸せを願った此の人の心は、そんな家族から腫れ物扱いされて座敷牢に押し込められた瞬間に亡くなってしまったのかもしれない。
だってそうでもなければ、一体此の人が何を糧として生きているのか到底想像もつかないから。
「それでも、彼らは私の家族ですから。家族は助け合うものでしょう」
だん、と。気がつけば吾は御前様の身体を全体重で押し倒して、冷たい座敷の上に彼の手首を縫い付けていた。今目の前にいる彼のことを愛していなければ……吾はこの男の喉元にこの鋭い牙を突き立てていただろう。そもそも彼に気を許していなければ共にこんな処にいなかっただろうから真相はわからないけれど。
「八房」
名を呼ばれて漸く彼の顔を真正面から見つめる。先程まで変わらぬ笑顔を貼り付けていた御前様は、ようやっとその薄っすらとした笑みを崩した。
なんだか安心したような憎らしいような不思議な心持ちに囚われつつ、それから一体どんな顔をするのかと期待していたら、御前様はまるで恋に溺れるような、愛おしいものを見るような顔でこちらをじいと見上げるのだから、やれいけと吾の背中を押したどす黒い感情は尻尾を巻いて引っ込んでしまうのだ。 その代わりに、彼をどうにも助けてあげられないという事実が――こんな場所からさっさと連れ出してくれ、と言って貰えないもどかしさが、じくじくと吾の胸の辺りを焦がした。
――――――――――――――
執筆中同人小説
「来世も見つけて、憑いてきて。」
より一部抜粋
BLカップリングサンプル
「お前が――魔王なのか」
「強情なやつだな。次に僕をお前呼ばわりしたら、食ってしまうよ」
にたりと口角を上げた魔物の口元から鋭い牙がちらりと覗いた。
捕食される側になるなんて久しぶりで、つい、指先がぞくりと震えて冷たくなる。
だけど、負けたくない。せめて気持ちだけでも。
「ふん。どうせ私を無事で帰すつもりもないんだろ、お前は」
わざとらしく『お前』を強調してやった。
するとそいつはこれまた楽しそうに笑って、忠告はしたからな、と呟く。かと思ったら私が着ていたドレスのホックにゆっくりと手をかけた。
ぷつ、ぷつ、と音を立てて少しずつドレスが肌蹴ていく。
「魔物ってのは案外グルメなんだな。食い物の包みを脱がそうとするなんて。てっきり頭から丸呑みするもんだと思ってたが」
「食い物? ふふ、君は勘違いをしている」
「……なに?」
そう問うと魔物は肩口に顔を埋める。一体何をと思っているとぬらりとした感触が首筋を這って、思わずびくりと肩が跳ねた。
「っ⁉」
「君を食い物だとは思っていないさ。今はまだ、だけど。せっかく面白そうなものを見つけたんだ。……飽きるまで楽しまないと、勿体ないだろう?」
こいつ、そういうことか……!
確かに魔物の中にはその加虐性の高さから人間を性的な意味で襲う種族もいると聞いたことがある。だからこそ女性が夜に独り歩きをするのは危険とされているのだけれど……まさか自分がその被害に遭いかけているとは考えてもいなかった。
だけど自分は令嬢を装っているだけでれっきとした男だ。脱がしたところで女じゃないと知れば多少驚くだろうし、その隙を突いて逃げ出してやる。そう息巻いて、どくどくと鳴る心臓を落ち着かせるように小さく息を吐いた。
そうこうしているうちにホックは全て外され、はらりとドレスが腰元まで落ちてくる。
「ん?」
ドレスの奥から現れた身体を見た魔物は不思議そうに首を傾げた。
今だ、と咄嗟に逃げ出そうとするも、その作戦は失敗に終わる。腰に回っているだけの手はどれだけ暴れようとぴくりともしない。それどころか暴れれば暴れただけ魔物の拘束はキツくなっていって、もはや逃げ出すことは不可能だとさえ思えた。
「こらこら、逃げようとするんじゃない。君はもう僕のものなんだから」
「くそ、離せよ! 何が楽しくてこんなことを! 私が男だってことはわかっただろう⁉」
そう言うと魔物はぽかんとした後、ああそうか、と零す。
「人間は普通、男女でまぐわうのだったな。だから君もこうして女に化けているんだろう? 男を、自分の領域に誘い込むために」
「そ、それがなんだって言うんだ」
「君はどうやら男だから僕に食われないと思っているみたいだけど――残念ながら、僕には性別なんて関係ないんだ」
「……は?」
にこやかに笑った魔物は私の体を抱き寄せ、ぐり、と自身の下半身を押し付けた。
服の上からでもわかるその大きさに思わず息を呑む。
「ひっ⁉」
「僕がこれを使うのは……手に入れた玩具に、僕のものだって印をつけるためだから」
舌舐めずりをするそいつを見て、ぞくりとした。
この魔物が言っている『印』とはきっと眷属契約のことだろう。一定以上の強さを持つ魔物は人間に魔力を注入することで自分の眷属を作り出すことが出来るのだ。
眷属となった人間は自我を失い、ただ主の命令を聞くだけの存在になってしまう。
今すぐ逃げなければ、自分はおしまいだ。焦りが先行して背筋を嫌な汗が伝って寒気がする。
早くこの場から逃げろと体中から危険信号が発信されているのに――こいつから発せられている圧が強すぎるせいかもはや身体が逃げ出すことを諦めていて。
簡単に言えば絶体絶命という状況だった。
「特別に優しくしてやる。だから大人しく僕のものになるといい」
ふわふわの指先が肌を擦る。妙に優しく触れられて、思わず声が出そうになるのを必死に堪えた。
ぎゅうと唇を噛んで口元を抑えていると手首を掴まれて引き剥がされる。
「なんだ、恥ずかしがっているのか? ふふ、面白いな」
「この野郎……っ、んうっ」
まるで恋人に愛撫でもするようにして優しく触れられ、キスをされ、頭がどうにかなってしまいそうだった。嫌なはずなのに柔い指先が這う度に身体が跳ねて快感を訴える。
「やめっ、ろぉ……やだぁ……っ」
恥ずかしさ、悔しさ、両親の仇が目の前にいるというのに良いようにされているもどかしさ――色々な感情が湧き上がってきて思わず目尻から一粒涙が溢れ落ちた。
途端、魔物はぽかんとした表情を浮かべる。しかし数秒後には、またにんまりと楽しそうに笑った。
「気に入った」
何を思ったのかそいつは一度脱がしたドレスをいそいそと元に戻し始める。一体どういった心境の変化だろう。
わけが分からず涙も止まってしまい、混乱する脳裏で魔物の顔を見た。
「君に印をつけるのは、君が本当の意味で僕のものになった時までとっておくことにする」
「本当の意味……?」
不思議がって問いかけるも魔物は優しくにこりと微笑むだけで何も言わない。
「そういえば、君の名前を教えてもらってないな」
「……答えないと言ったら?」
「それでもいい。こうすればわかるから」
そう言うなり魔物の手のひらが頬を包み込んで、ゆっくりと顔が近づいてくる。今度は何をされるんだと思いながらぎゅっと目を瞑ると額にこつんと何かが当たるような感触がした。するとなんだか、記憶の中に誰かが勝手に侵入してくるような不思議な感覚に襲われる。
恐る恐る目を開けると目の前に緑色の眼光が飛び込んできた。まるで子供の体調を心配する母親のようにやつは私の額にひやりとした体温を当て続ける。
それから数分後、魔物はそっと離れていきながら微笑んだ。
「君はサルビアというのだな。綺麗な名前だ」
「……今のも魔法か。便利なものだな」
皮肉たっぷりにそう言ってやると魔物は、そうだろう、と自慢げに目を細める。
「じゃあこれから君のことはルビィと呼ぶことにしよう」
「っ‼」
思わず固まった。 それは……ルビィという名は、幼き頃、父と母が自分を呼ぶときによく使っていた愛称だったから。
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頒布中同人小説
「王座に座して、手を引いて。」
より一部抜粋