Book&Novels

とらのねぐらには、
本が転がっている。

一次創作同人サークル
「午前、6時30分」

「とらお。」が主を務める一次創作小説の発行を主とした同人サークル。
メインはBLジャンル、他文学系や気まぐれで短編など自由に執筆しています。

主にJ.GARDENと文学フリマに出没。

お知らせ(2024年11月23日更新)

◯サークル名について
 2024年11月23日付にて、とらお。が運営する小説同人サークル「もふもふ天国!」はサークル名を「午前、6時30分」へ改名致しました。なおBOOTHやXfolio、過去に頒布した作品等では旧サークル名の表示のままの可能性がございますが、どちらも同サークルとなります。
 今後とも「とらお。」と当サークルをどうぞ宜しくお願い致します。

小説同人誌

迫りくる波、あしらう爪先

#短編集 #年の差
#幼馴染 #転生
#主人公×モブ
#大学生×社会人 #現代 


※こちらの作品は2024年11月現在制作中のものです
※2025年3月J.GARDENにて頒布予定

 「迫る男とあしらう男」をテーマに執筆した読み切り短編集。
 又従兄弟、11歳差の恋。
 恋愛シミュレーションゲームの名前もないモブが、主人公に迫られる。
 セフレをヤリ捨てしたらとんでもない復讐を受ける。

 上記三種の「迫る男とあしらう男」をテーマにした短編を掲載。
 なお、Anthologyにて紹介中の創作BLアンソロジー「傘をさしかけるひと」が在庫僅少とのことで、こちらに寄稿した短編も掲載致します。

【文庫判1段組130~150P ※想定】

Illust:いかめし様(@ika_meshi18)

サンプル

 学生時代、共に夏を過ごした又従兄弟――新太くんとは、もう暫く会っていない。というかそもそも、高校最後の夏休みを機に親元を離れる形で大学へ進学してそのまま社会人になってしまったせいで、祖父母の家に行ったのもあれきりだ。
 自宅と会社以外の交流なんて、年に二回、盆と正月に実家へ帰るぐらいのもので、一等親以上の親族に対して交流なんてしようとも思い立つことがなかった。
 だからもう、新太くんとの関係は、法的には又従兄弟という続柄にあたるにしても限りなく他人に近いものになっているだろうと。
 そう、思っていた。
「――みーくん!」
 駅前にある、一時間飲み放題九九〇円の学生向けの焼肉屋。休日かつ大学生は夏休みということも相まって随分賑わっている店内に、その声は心臓が冷たくなるほど響き渡る。
 その声を発したのはちょうど、飲み放題の一杯目に頼んだ生ビールを持ってきてくれた店員さんだった。赤い前掛けをして前掛けと同じ色の布を頭に巻き、どこからどう見ても「大衆向け焼肉屋の学生バイト」にしか見えないその男の子はジョッキを握りしめたまま僕の席のすぐそばで立ち尽くしている。
「あの……?」
 ビールが来る少し前に運ばれてきたお通しをつまもうとしていた僕は、箸を持った手を宙に浮かせたままその声の主を見る。
 目があった彼はというと暫くその場で口をぱくぱくさせたと思ったら「ちょっと待ってて!」と慌てた様子で引き返し――戻ってきて、ビールを僕の目の前に置くと改めて走り去った。
 『みーくん』なんて、いつぶりに呼ばれただろう。
 学生の特権である夏休みを思う存分謳歌していた頃に戻ったようだ、とぼんやり考えつつビアジョッキに手を伸ばす。
 ――いや、待て。
 どうしてその呼び方を?
 ようやく冷静になってあの店員が消えていった厨房の奥を見つめていたら、先程の彼が私服姿で戻ってきた。かと思えば、一人でボックス席を占領していた僕の正面にひょいと座り込む。
 そのまま彼は期待の籠もった眼差しでこちらを見ながら、にぱっと笑った。
「久しぶり、みーくん」
 脳裏で日暮の鳴き声がする。
 ソワソワとしながら僕の様子を窺っているらしい彼の背後に、じわりと、夢で見た背景が浮かんだ。
「……新太、くん?」
恐る恐るそう尋ねると彼は更に満開の笑顔を浮かべて何度も首を縦に振る。
 その様子を僕は、まるで夢の続きでも見ているかのような心持ちで見つめた。
 だって記憶の中の新太くんと言えば、ザ・田舎にいる男の子という感じで、真っ黒に日焼けした肌と、白いタンクトップにハーフパンツ姿しか見たことがなかったし――会う時期が決まって夏だったからという可能性もあるけれど――、母親が切っているらしい髪は不揃いで、子供らしい、ヤンチャな野球少年という見た目だったのに。今の彼は健康的に焼けた肌はそのままに大学生らしく髪を明るく染めて、服だって最近流行りのビッグシルエットを程よく着こなしており、今時の垢抜けた若者という雰囲気だ。
 正直こうして対峙しても当時の面影を微塵も感じられなくて、うっかり僕の名前がどこかから漏れて詐欺にでも遭いかけているのはないかと勘繰ってしまうほどである。
「あの、あのね、俺、この近くの大学通ってるんだ。ここはバイト先で……家もこの近くで、最近引っ越してきて、それで」
(……あ、)
 じわりと懐かしさが滲む。
 この、感情が勢い余るような話し方。最適な言葉を手探りで探すようにしてあちこちに視線を泳がせる仕草。
 ようやく彼の――菊池新太という人間の面影を一欠片見つけることが出来た僕はしゃんと背筋を伸ばした。
「ええと、久しぶり。新太くん。まさかこんなところにいるなんて思わなかったし……それに、すごく大人っぽくなっているから、気付かなかったよ。びっくりした」
「えへへ。そう、かな。みーくんはあんまり変わってないね」
 確かに学生時代の僕と今の僕との変わったところなんて、高校に入って突然垢抜け始めた友人達に誘われるまま染めていた茶髪がすっかり地毛に戻ったぐらいのものだろう。
 それにしたって多少はこう、佇まいとか立ち居振る舞いとか、そういう部分が大人になっていてほしいものだけれど。人間はそう変わることは出来ないということだろうか。
「ね、一緒にご飯食べて良い?」
ふわり、と。新太くんは慣れたように微笑んで、僕の顔を見ながらテーブルに頬杖をついた。
「それはいいけど……新太くん、バイトは?」
「今日は元々お昼で上がり。だから大丈夫。もう終わったよ」
 言われて店にかかっている時計を見上げると確かに時刻は正午を十数分過ぎた頃だった。
「そっか。お疲れ様」
「うん、ありがとう」
 一瞬、会話が途切れる。
 もうすっかり蝉の声は聴こえなくなったけれど、代わりに、晩夏を背景に求婚されたあの場面が瞬きするたびに瞼の裏で滲んだ。
(……忘れよう。彼だってきっと、覚えていない)
 十七歳の夏以降、大学に入るまで僕はその日のことをよく夢に見ていた。
 その求婚はあまりにも、ショックだったから。
 男同士だからとか、年の差があるからとか、そういうことではなく――又従『兄弟』だったから。
 僕は本当に彼のことを、血の繋がった兄弟だと、愛すべき弟だと、そうして新太くんもまた僕のことを兄として慕ってくれていると、そう思っていたから。
 彼が、兄弟の関係では満たされないと感じていたことがあんまりショックで、絶賛思春期だった僕は、可愛らしい笑顔を浮かべるその裏で邪な気持ちを抱えているのかと勝手に推測してほんの少しの嫌悪すら覚えたほどだった。
 冷静になってから、齢六つの幼子がそんなことを考えるわけがないと思い直し、汚れているのは自分だと今度は自己嫌悪に陥ったわけだけれど。
 瞬間、脳裏にあの日の記憶がじわりじわりと浮かぶ。
(ああ、戻ってきた。鮮明に。匂いも、色も、ほんの一瞬の呼吸音さえ。僕は何一つ忘れていなかった)
 大学受験中から大学生活初期にかけてずっと僕の中に根を張っていたその衝撃は、平凡で尋常一様な社会人生活に身を浸していく毎に枯れて、すっかり土に還ったのだと思っていたけれど、忙しさで記憶の奥の奥へ追いやられていただけのようで、どうやら未だ根深く僕の中に残っていたらしい。
 けれど、当時とは随分見え方が違う。
 今となっては「当時こんなことがあったよね。覚えてる?」と酒の肴に出来そうなほどだ。
 きっと彼にとっても、また僕にとってもあの求婚はもう過去のもので、今は純粋に、数回の夏を共に過ごした遠い親戚との再会を喜んでくれているのだろう。そう思った僕は、自分の中に残っている『兄』としての面影を辿るようにして、彼に笑みを向ける。

サンプル

 学生時代、共に夏を過ごした又
従兄弟――新太くんとは、もう暫
く会っていない。というかそもそ
も、高校最後の夏休みを機に親元
を離れる形で大学へ進学してその
まま社会人になってしまったせい
で、祖父母の家に行ったのもあれ
きりだ。
 自宅と会社以外の交流なんて、
年に二回、盆と正月に実家へ帰る
ぐらいのもので、一等親以上の親
族に対して交流なんてしようとも
思い立つことがなかった。
 だからもう、新太くんとの関係
は、法的には又従兄弟という続柄
にあたるにしても限りなく他人に
近いものになっているだろうと。
 そう、思っていた。

「――みーくん!」
 駅前にある、一時間飲み放題
九九〇円の学生向けの焼肉屋。
 休日かつ大学生は夏休みという
ことも相まって随分賑わっている
店内に、その声は心臓が冷たくな
るほど響き渡る。
 その声を発したのはちょうど、
飲み放題の一杯目に頼んだ生ビー
ルを持ってきてくれた店員さんだ
った。赤い前掛けをして前掛けと
同じ色の布を頭に巻き、どこから
どう見ても「大衆向け焼肉屋の学
生バイト」にしか見えないその男
の子はジョッキを握りしめたまま
僕の席のすぐそばで立ち尽くして
いる。
「あの……?」

 ビールが来る少し前に運ばれて
きたお通しをつまもうとしていた
僕は、箸を持った手を宙に浮かせ
たままその声の主を見る。
 目があった彼はというと暫くそ
の場で口をぱくぱくさせたと思っ
たら「ちょっと待ってて!」と慌
てた様子で引き返し――戻ってき
て、ビールを僕の目の前に置くと
改めて走り去った。
 『みーくん』なんて、いつぶり
に呼ばれただろう。
 学生の特権である夏休みを思う
存分謳歌していた頃に戻ったよう
だ、とぼんやり考えつつビアジョ
ッキに手を伸ばす。
 ――いや、待て。
 どうしてその呼び方を?

 ようやく冷静になってあの店員
が消えていった厨房の奥を見つめ
ていたら、先程の彼が私服姿で戻
ってきた。かと思えば、一人でボ
ックス席を占領していた僕の正面
にひょいと座り込む。
 そのまま彼は期待の籠もった眼
差しでこちらを見ながら、にぱっ
と笑った。
「久しぶり、みーくん」
 脳裏で日暮の鳴き声がする。
 ソワソワとしながら僕の様子を
窺っているらしい彼の背後に、じ
わりと、夢で見た背景が浮かんだ。
「……新太、くん?」
 恐る恐るそう尋ねると彼は更に満
開の笑顔を浮かべて何度も首を縦
に振る。

 その様子を僕は、まるで夢の続
きでも見ているかのような心持ち
で見つめた。
 だって記憶の中の新太くんと言
えば、ザ・田舎にいる男の子とい
う感じで、真っ黒に日焼けした肌
と、白いタンクトップにハーフパ
ンツ姿しか見たことがなかったし
――会う時期が決まって夏だった
からという可能性もあるけれど――、
母親が切っているらしい髪は不揃
いで、子供らしい、ヤンチャな野
球少年という見た目だったのに。
 今の彼は健康的に焼けた肌はそ
のままに大学生らしく髪を明るく
染めて、服だって最近流行りのビ
ッグシルエットを程よく着こなし
ており、今時の垢抜けた若者とい

う雰囲気だ。
 正直こうして対峙しても当時の
面影を微塵も感じられなくて、う
っかり僕の名前がどこかから漏れ
て詐欺にでも遭いかけているのは
ないかと勘繰ってしまうほどであ
る。
「あの、あのね、俺、この近くの
大学通ってるんだ。ここはバイト
先で……家もこの近くで、最近引
っ越してきて、それで」
(……あ、)
 じわりと懐かしさが滲む。
 この、感情が勢い余るような話
し方。最適な言葉を手探りで探す
ようにしてあちこちに視線を泳が
せる仕草。
 ようやく彼の――菊池新太とい

う人間の面影を一欠片見つけるこ
とが出来た僕はしゃんと背筋を伸
ばした。
「ええと、久しぶり。新太くん。
まさかこんなところにいるなんて
思わなかったし……それに、すご
く大人っぽくなっているから、気
付かなかったよ。びっくりした」
「えへへ。そう、かな。みーくん
はあんまり変わってないね」
 確かに学生時代の僕と今の僕と
の変わったところなんて、高校に
入って突然垢抜け始めた友人達に
誘われるまま染めていた茶髪がす
っかり地毛に戻ったぐらいのもの
だろう。
 それにしたって多少はこう、佇
まいとか立ち居振る舞いとか、そ

ういう部分が大人になっていてほ
しいものだけれど。人間はそう変
わることは出来ないということだ
ろうか。
「ね、一緒にご飯食べて良い?」
ふわり、と。新太くんは慣れたよ
うに微笑んで、僕の顔を見ながら
テーブルに頬杖をついた。
「それはいいけど……新太くん、
バイトは?」
「今日は元々お昼で上がり。だか
ら大丈夫。もう終わったよ」
 言われて店にかかっている時計
を見上げると確かに時刻は正午を
十数分過ぎた頃だった。
「そっか。お疲れ様」
「うん、ありがとう」
 一瞬、会話が途切れる。

 もうすっかり蝉の声は聴こえな
くなったけれど、代わりに、晩夏
を背景に求婚されたあの場面が瞬
きするたびに瞼の裏で滲んだ。
(……忘れよう。彼だってきっと、
覚えていない)
 十七歳の夏以降、大学に入るま
で僕はその日のことをよく夢に見
ていた。
 その求婚はあまりにも、ショッ
クだったから。
 男同士だからとか、年の差があ
るからとか、そういうことではな
く――又従『兄弟』だったから。
 僕は本当に彼のことを、血の繋
がった兄弟だと、愛すべき弟だと、
そうして新太くんもまた僕のこと
を兄として慕ってくれていると、

そう思っていたから。
 彼が、兄弟の関係では満たされ
ないと感じていたことがあんまり
ショックで、絶賛思春期だった僕
は、可愛らしい笑顔を浮かべるそ
の裏で邪な気持ちを抱えているの
かと勝手に推測してほんの少しの
嫌悪すら覚えたほどだった。
 冷静になってから、齢六つの幼
子がそんなことを考えるわけがな
いと思い直し、汚れているのは自
分だと今度は自己嫌悪に陥ったわ
けだけれど。
 瞬間、脳裏にあの日の記憶がじ
わりじわりと浮かぶ。
(ああ、戻ってきた。鮮明に。匂
いも、色も、ほんの一瞬の呼吸音
さえ。僕は何一つ忘れていなかった)

 大学受験中から大学生活初期に
かけてずっと僕の中に根を張って
いたその衝撃は、平凡で尋常一様
な社会人生活に身を浸していく毎
に枯れて、すっかり土に還ったの
だと思っていたけれど、忙しさで
記憶の奥の奥へ追いやられていた
だけのようで、どうやら未だ根深
く僕の中に残っていたらしい。
 けれど、当時とは随分見え方が
違う。
 今となっては「当時こんなこと
があったよね。覚えてる?」と酒
の肴に出来そうなほどだ。
 きっと彼にとっても、また僕に
とってもあの求婚はもう過去のも
ので、今は純粋に、数回の夏を共
に過ごした遠い親戚との再会を喜

んでくれているのだろう。そう思
った僕は、自分の中に残っている
『兄』としての面影を辿るように
して、彼に笑みを向ける。

犬神憑きは、夢を見る。(成人向け)

#人間×怪異 #人外受け
#長編 #妖怪・怪異
#転生 #来世 #大正時代
#獣人

【あらすじ】
 人ならざるものは、いつでもそこに居た。
  僕が気付かなかっただけで。

 時は大正、東京は銀座。
 1919年の日本、士族に仕える青年『統(みつる)』はある日、怪しげな虚無僧に襲われる。
 「前世から追いかけてきた」と語るその虚無僧は自身を受け入れろと迫った……。
 あまりに突飛なその邂逅は統にとって、今後の人生を、『当たり前』を、『日常』を、大きく揺るがす出来事へと発展していく。
【新書判2段組200P】

王座に座して、手を引いて。(成人向け)

#人外(魔族)×人間 #人外攻め
#無理やり #触手 
#残酷描写あり #欠損表現あり
#ファンタジー #成人向け

【あらすじ】
 この世界の人々は、長い間魔物という存在に悩まされていた。
 中でも魔族の長・魔王は最悪の厄災とされている。

 そんな世界で帝国軍に所属し暗殺者として日々を生きるサルビアは、あまりにも凶悪すぎる魔物と邂逅を果たす。
 自身が魔王だと名乗るその魔物は、激しく抵抗するサルビアを拐かし熱烈な求愛を押し付ける――。

【新書判2段組290P】

君の代わりは何処にも居ない(成人向け)

#人間×獣人 #人間攻め
#主従関係 #盲目
#残酷描写あり #欠損表現あり

#ファンタジー #成人向け

【あらすじ】
 紛争地帯で生まれた双子の兄弟、セイとユウ。
 激動の中を手を取り合って生き抜いた彼らは今、遠く離れた国で平和に暮らしていた。

 互いの人生を生きる中、恋人と同棲しているはずの弟・ユウから兄・セイのもとへ連絡が入る。
「兄さん。僕ね、結婚するんだ」
 それが弟との最期の会話になるなんて、思っても見なかった。

 命より大切な人を失った二人が結ばれるかもしれない物語。
 胸にぽっかりと空いた穴を埋められる人は――もうこの世には居ない。

【B6判2段組P】

兄弟ができるなんて聞いてないっ!

#獣人×人間 #義兄弟
#大学生×高校生 #ラブコメ
#すれ違い #ドタバタ

#日常 #ほのぼの

【あらすじ】
 ある日、両親の再婚によって突然兄弟となった秋名純と葉島累。
 兄弟として仲良くなりたい純だったが、累は素っ気ない態度。
 ついに「兄とは呼びたくない」とまで言われてしまう。

 落ち込む純だったが、累には別の思惑があった……。

【B6判2段組108P】

君に地獄は似合わない

#妖怪×人間 #現代
#三角関係 #陰陽師
#大学生 #日常

#ほのぼの #ホラー表現

【あらすじ】
 一人暮らしをしている大学生、月白灯はある日、廃れた神社で牛の頭を持つ化物と邂逅する。
 化物は灯を連れ去り、「ずっとここにいて欲しい」と懇願した。
 身の危険を感じた灯が下した決断は――、
「お、俺の家っ、来ればいいんじゃないですかね……?!」

 四畳半の空間で、人と化物の生活が始まった。

【新書判2段組252P】

今日はどっちが下になる?(成人向け)

#獣人×人間 #リバ
#幼馴染 #同性婚 
#成人向け #新婚生活
#媚薬 #日常
#ほのぼの #イチャラブ

【あらすじ】
 小、中、高と同じクラス。
 交際して五年、結婚して三年。
 トータル20年もの時を共に歩んできた腐れ縁ともいえる二人、出雲空と工藤條。
 普段は仲のいい彼らが唯一大ゲンカに発展してしまう要因がある。
 それは、”今日はどっちが下になる”?!

【B6判2段組67P】

部長の下で乱れたい!(成人向け)

#獣人×人間 #年の差
#同性婚 #成人向け
#新婚生活 #温泉

#日常 #ほのぼの
#イチャラブ

【あらすじ】
 獣人と人間が当たり前に共存する世界。
 そんな世界の中小企業で営業事務を担当する一之瀬まことと、
 営業部部長の朝桐伊墨。
 二人は、恋人だ。

 やっとの思いで恋を成就させたまことだったが
 伊墨とのスキンシップが少ないことを悩んでいた。
 ある日、友人からのアドバイスで伊墨と共に温泉旅行へ行くことになり……?

【B6判2段組57P】

部長に顔を埋めたいっ!

#獣人×人間 #年の差
#オフィスラブ #片思い
#日常 #ほのぼの

#イチャラブ

【あらすじ】
 獣人と人間が当たり前に共存する世界。
 そんな世界の中小企業で営業事務を担当する一之瀬まことは、
 営業部長の朝桐伊墨に恋をしていた。
 ある日、友人がセッティングしてくれた飲み会で二人の仲は急速に変化して…?

【B6判2段組71P】

合同誌

錠で監して空に篠笹(成人向け)

#合同誌 #クロスオーバー
#獣人×人間 #狼×人間
#成人向け #妖怪・怪異
#人外 #トリップ
#◯◯しないと出られない部屋

【あらすじ】
 もふもふ天国!(サークル主:とらお。)、独楽の独り舞(サークル主:狛枝ころや)による合同誌第二弾。
 「野狐と大正妖奇譚」(著:狛枝ころや)
 「今日はどっちが下になる?」(著:とらお。)の公式スピンオフ。
  それぞれに登場する主要キャラ達が「~しないと出られない部屋」に閉じ込められるお話。
 今回は青年向けでご用意。
 ぜひ御覧ください。

【収録内容】
 ◆第一章「好きなところを10個」
 ◆第二章「プロポーズ」
 ◆第三章「好きな人以外とキス」
 ◆第四章「××しないと出られない部屋」
 ◆前作合同誌紹介
 ◆キャラクター紹介
 ◆各作者あとがき
【B6二段組58P】

篠つく寒雲、二条の空。

#合同誌 #クロスオーバー
#獣人×人間 #狼×人間
#和風 #妖怪・怪異
#人外 #トリップ
#現代 #大正時代
#ほのぼの

【あらすじ】
 もふもふ天国!(サークル主:とらお。)、独楽の独り舞(サークル主:狛枝ころや)による合同誌。
 「野狐と大正妖奇譚」(著:狛枝ころや) 「今日はどっちが下になる?」(著:とらお。)の公式スピンオフ。
 各サークル主要キャラ達がお互いの世界にトリップしてしまうお話を二章仕立てでご用意。
 それぞれの世界がぎゅっと詰まった一冊。
  本編を読んでいなくてもお楽しみいただけますので、各サークルへの入門書としてもオススメ。

【収録内容】
 ◆第一章(執筆:とらお。)
 ◆第二章(執筆:狛枝ころや)
 ◆各キャラクター紹介
 ◆各世界観設定紹介
 ◆各作者によるあとがき

ボイスドラマ

今日もあなたの声が聴きたい

#ボイスドラマ #ほのぼの
#獣人×人間 #日常
#同性婚 #人外 #現代

【あらすじ】
 「もふもふ天国!」初のボイスドラマ作品。
 空と條、伊墨とまこと、それぞれの日常を覗き見する、日常系ほのぼのボイスドラマ。
 ボイスドラマ本編の他ドラマ内容と連動した短編小説を掲載した特別冊子つき。

【冊子:B6版2段組54P】
【ブックレット:12ページ】

短編小説

挨拶は大事(※ホラー注意⚠)

「もう仕事には慣れた?」

 そう話しかけてくれた先輩へ、肯定の意を込め
て頷いて見せる。
 ここはとある田舎にある介護福祉施設。
 数週間前、都会暮らしに疲れた自分は呑気な暮らしに憧れて全てを投げ出し、現在、山の直ぐ側にある小さな町の古びた介護施設にいた。
 入居者はほんの数人ほど。
 殆ど空室ばかりのその施設はなんだかプライベートな空間のようで居心地が良い。給料も出ないのに朝早く起きて施設内を巡回し、夜遅くまで受付に座ってぼうっとするのがすっかり日課となりつつある。

「おはようございまーす」

 居室のドアを開けながら中へ入ると車椅子に座って窓の外を眺める入居者のおじいさんがいた。
 彼は昨日と全く同じ場所で、ぽっかりと口を開けたまま虚ろな瞳で窓の外を見ている。自分が正面に回るとおじいさんは視線だけをこちらに向けた。

「おはようございまーす」

 もう一度声を掛けてみるも、おじいさんはぱくぱくと口を動かすばかりで返事は返ってこない。しかしこれが彼のいつも通りなので自分は深く気にすることなく居室を後にした。続いてはお隣のおばあさんの部屋へ入り、寝たきりで動かない彼女に声を掛ける。

「おはようございまーす」

 天井を見上げたままのおばあさんの顔を覗き込むと、瞳孔の開いた目がそこにあった。
 彼女もいつも通り、異常なしだ。
 そうして巡回を終えた自分は受付に戻って椅子に座った。
 本日の業務は終了。

「もう仕事には慣れた?」

 先輩のその一言でまた業務が始まる。
 その言葉に頷きながら、自分はまた受付を出て、施設内の巡回を開始した。

「おはようございまーす」

 居室のドアを開けながら中へ入ると車椅子に座って窓の外を眺める入居者のおじいさんがいた。
 彼は昨日と全く同じ場所で、ぽっかりと口を開けたまま虚ろな瞳で窓の外を見ている。自分が正面に回るとおじいさんは視線だけをこちらに向けた。

「おはようございまーす」

 もう一度声を掛けてみるも、おじいさんはぱくぱくと口を動かすばかりで返事は返ってこない。しかしこれが彼のいつも通りなので自分は深く気にすることなく居室を後にした。続いてはお隣のおばあさんの部屋へ入り、寝たきりで動かない彼女に声を掛ける。

「おはようございまーす」

 天井を見上げたままのおばあさんの顔を覗き込むと、瞳孔の開いた目がそこにあった。
 彼女もいつも通り、異常なしだ。
 そうして巡回を終えた自分は受付に戻って椅子に座った。
 本日の業務は終了――かに、思われた。

「えー、ちょっと。思ったより怖くなーい?」
「大丈夫だって! ほら奥の方、見てみようぜ!」

 入口からそんな声がして視線を向けると、派手な格好をした若者が四人、男女グループで施設に入ってきていた。先に説明した通りこの介護施設は古く、ボロボロだ。はたから見れば稼働しているようには見えないため時折こうして肝試しにやってくる若者がいる。
 しかもその様子が撮影され、SNSで拡散されたとかで以前よりその頻度は増していた。
 注意をしようと受付を出て彼らの前に歩み出たけれど、若者たちは自分を無視して勝手に施設内の探索を始める。

「なんか寒ーい。なんでだろ?」
「そういや聞いたことあるんだけど、幽霊がいるところって気温が低いんだって。ここマジで出るって噂だし」

 そりゃあ色んな入居者さんを看取ってきた空間だ。
 幽霊の一匹や二匹いたっておかしくないだろう。
 しかし彼らはようやく辛い現世から開放されて穏やかに暮らしているのだ。
 心地の良い居場所を踏み荒らされるのは気分の良いものではない。
 自分はスマートフォンで撮影をしながら奥へ進む若者たちを追いかけた。

「なあ、この部屋入ってみようぜ!」

 そう言って彼らが入っていったのはおじいさんの居室。
 ノックも挨拶もせず、ずかずかと入った若者たちは窓際に座っているおじいさんにカメラを向けた。おじいさんは自分にするのと同じように視線だけを若者たちに向ける。

「うわ……車椅子って、マジかよ」
「めっちゃ雰囲気あるねー。私も撮っておこーっと」

 四人全員でおじいさんの撮影を始めた若者たち。あのままではおじいさんが可哀想だ、助けに入らないと。
 ゆっくり彼らに近付くと、そのうち一人の女性が不意に悲鳴を上げた。
 その場にいる全員の視線が彼女に集まる。

「顔に反応するエフェクトついたんだけど……!」
「マジ?! ちょ、見せて!」

 若者たちは集まって悲鳴を上げた女性のスマホを覗き込んだ。
 自分もなんとなくそれを覗き込むと確かに、おじいさんに可愛らしいクマのエフェクトがついている。

「これSNSに上げたらバズるんじゃね?! もっと撮影しようぜ」
「えぇ~? なんかさっきより寒くなってきたし、そろそろ帰ろうよぉ」
「バカお前、これからが楽しいとこだろー?」

 そうして彼らはおじいさんの居室を出て隣の部屋に入っていった。
 自分もそれを追いかける。
 撮影したまま意気揚々と居室を奥へ進む彼らは、一番奥にあるベッドまであと数歩というところで足を止めた。

「ねえ……あれ、人の足じゃない……?」

 酷く怯えた様子の女性に、他三人も顔を見合わせてごくりと生唾を飲む。かと思えば撮影を行っていた男性が震えながらもベッドに近づき、カーテンを勢いよく開けた。
 ベッドに横たわっているおばあさんの姿があらわになると同時にまたしても女性陣からは大きな悲鳴が上がる。

「なにこれ、ミイラ……?!」
「入居者の死体か? これ大スクープだろ! しっかり全身撮らないと!」

 失礼な子たちだ。彼女は眠っているだけなのに。
 一頻りおばあさんを撮り終えた若者たちはその後も施設内を我が物顔で闊歩し続ける。
 注意をしようにも無視をされてしまうしどうしたものかと頭を抱えていたら、先輩がふらふらとやってきた。先輩は廊下を進む若者たちの背中と自分の顔とを交互に見た後、施設の入口の方を指差す。
 それに頷いた自分は若者たちの追跡をやめて入口の方へ戻り、鍵をかけた。
 ついでに外から閂もして、準備万端だ。
 慇懃無礼な若者たちに少しお灸を据えてやらないと。
 そうして待機していたら若者たちはそれぞれの反応をしながら入口まで戻ってきた。

「はぁ~、もうマジで怖かった……呪われたらアンタ達のせいだからね!」
「お、俺は別に怖くなかったけど」
「なあこれ、SNSに今上げちゃおうぜ! あれ? 圏外だ」
「山奥のド田舎なんだから当たり前でしょ。そんなの後でいいから早く帰ろ!」

 がちゃん。
 彼らが手をかけた入口のドアはそんな音を立てながら、びくともしない。

「――え? ちょ、嘘でしょ……開かない……!」
「なあ、これ外から閂されてないか?」
「な、なんで?! だってここ、もう使われてない施設なんでしょ?! 入ってくる時は開いてたのに!」

 案の定、四人はパニックになっている。
 大人を舐めるからこうなるのだ。と少し鼻高々とした気分になっていると、入口ロビーに先輩がやってきた。先輩は苛立たしそうにロビーに置いてあったペン立てを手で払って床に落とす。
 ペン立てが転がる音とペンが散らばる音がロビーに響き渡った。

「なんだ、今の音?!」
「もういやぁ!」

 若者たちは阿鼻叫喚。その姿がなんだかおかしくって、笑いが溢れる。

「ねぇ……笑い声、するんだけど」
「俺も聞こえた……くそ、ふざけんな! 開け! 開けよ!」

 がちゃがちゃ。
 がちゃがちゃ。
 残念ながらドアは開かない。
 パニックが加速する彼らの様子にまた笑ってしまったら、ついに彼らは弾かれたように走り出した。
 それをまた、追いかける。

「なに、なんなの?! どうなってんの?!」
「俺達マジで呪われたんじゃ……?!」
「もう本ッ当最悪! だから私は来たくないって言ったんじゃん!」
「お、俺のせいかよ?! お前らだってなんだかんだ乗り気だっただろ?!」

 なんて、喧嘩をしながら駆け抜ける彼ら。
 しかし出鱈目に走り続けるものだから同じところをぐるぐると回っている。
 時折窓を開けようと試しているようだが、残念ながら窓は転落事故防止のため常に施錠されているので無駄なあがきだ。青ざめる彼らが一体どうするのかと眺めていたら、若者たちは何故か階段を上って最上階である五階へ進んでいった。

「なんで上行くのよ?! どうやって出るつもり?」
「さっき外から入る時、点検用の梯子がついてるの見えたんだよ。屋上に行けたらそこから出られるだろ」

 そういえばそんなものあったような気もする。
 どうせなら行く末を見守ってやろうと先回りして屋上へ出るドアの鍵は開けておいてあげた。

「よ、よし! 開いてる!」

 すると若者たちはドアを随分乱暴に開けて足早に屋上を駆け抜ける。
 しばらく屋上で何かを探すようにしていた彼らはようやく、点検用の梯子を発見した。

「下まで続いてるぞ! ここから出られる!」
「良かったぁ、早く降りよ!」

 言いながら若者たちは我先にと梯子を降りていく。
 その様子を見下ろしながら自分はふいと、梯子と建物を繋げているボルトに視線を下ろした。
 どうやら彼らは知らないらしい。
 この梯子の最大荷重が100kgであることも――その梯子が、何十年も前に設置されて以来、誰にも使われていないことも。案の定、その重荷に耐えかねたボルトはサビた部分からぼっきりと二つに折れる。
 無論、梯子はめきめきと音を立てながら壁から離れ始めた。
 そのまま悲鳴が響き渡って、数秒の後、ぐちゃりと、内臓が潰れて血肉が飛び散る音がする。うち一人が呻きながらぴくぴくしていることを考えるにまだ生きているようだが時間の問題だろう。
 自分もそうだったから。

「おはようございまーす」

 生きている一人にそう声を掛けると、一人は大きく目を見開いて、がちがちと歯を鳴らす。

「もう仕事には慣れた?」

 すっかり聞き慣れた声に振り向くと、先輩が自分の隣で同じように若者たちを見下ろしながら笑っているのが見えた。自分もそれにつられて笑う。
 若者たちのうち一人が絶命するその瞬間、ようやっと、目が合ったような気がした。

「もう仕事には慣れた?」

 そう話しかけてくれた先輩へ、肯定の意を込めて頷いて見せる。
 ここはとある田舎にある介護福祉施設。
 数週間前、都会暮らしに疲れた自分は呑気な暮らしに憧れて全てを投げ出し、現在、山の直ぐ側にある小さな町の古びた介護施設にいた。
 入居者はほんの数人ほど。
 殆ど空室ばかりのその施設はなんだかプライベートな空間のようで居心地が良い。給料も出ないのに朝早く起きて施設内を巡回し、夜遅くまで受付に座ってぼうっとするのがすっかり日課となりつつある。

「おはようございまーす」

 居室のドアを開けながら中へ入ると車椅子に座って窓の外を眺める入居者のおじいさんがいた。
 彼は昨日と全く同じ場所で、ぽっかりと口を開けたまま虚ろな瞳で窓の外を見ている。自分が正面に回るとおじいさんは視線だけをこちらに向けた。

「おはようございまーす」

 もう一度声を掛けてみるも、おじいさんはぱくぱくと口を動かすばかりで返事は返ってこない。しかしこれが彼のいつも通りなので自分は深く気にすることなく居室を後にしようとした。
 瞬間、居室のサイドテーブルに置かれていたラジオが、ジジ……と音を立てる。

『三日前の未明、✕✕県◯◯郡△△町で男女四人が死亡しているのが発見されました。発見現場は町内にある元介護施設の廃墟で、点検用の梯子を使用していたところ老朽化により梯子が破損し、落下死したと見られています。この施設は管理者が死亡してから五十年ほど経過しており現在はSNSで有名な心霊スポットとして――』

 どうせなら楽しい内容がいいだろうとラジオのダイヤルを回し、自然の音が流れる放送に変え、居室をあとにした。
 そうして自分は隣のおばあさんの居室へ入る。
 いつも通りに。